塩ビ工業・環境協会発行「塩ビ ファクトブック2005」より転載

塩ビ樹脂は金属、ガラス、木材、天然繊維、紙、布などに代わる丈夫で軽い新素材、プラスチックとして、1931年にドイツで生まれました。今では、先進国・途上国を問わず、その経済性、耐久性、自己消火性、加工性、省資源性などから世界全体で年2,500万トンも使用されています。
水道管・下水管・電力線などの公共ライン、壁装材・建具・雨樋・窓枠・床材・デッキ・屋上防水シートなどの建築資材、園芸ハウス、半導体洗浄装置・排気ダクトなどの農工業設備資材、自動車・家電のパーツ、ラップフィルム・合成皮革、文房具などの雑貨というように、都市基盤からエレクトロニクス、日用品に至るまで、広範な分野の塩ビ製品が、安全・健康・利便・美観を通じて人々の暮らしを支えています。このような様々な塩ビ製品の原材料が塩ビ(フルネームはポリ塩化ビニル、または塩化ビニル樹脂)なのです。

 プラスチックは合成樹脂ともいわれ、フェノール樹脂やメラミン樹脂など、加熱により硬化し、二度と溶融しない性質をもつ熱硬化性樹脂と、塩ビ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなど、加熱により軟化する性質をもつ熱可塑性樹脂に分類されます。 (図表1-1)
 熱可塑性プラスチックは通常、酸化防止剤などを添加した粒状の成形材料(コンパウンド)で供給されますが、塩ビ樹脂は酸化しにくく劣化が少ないために粉末での供給や長期間の保管が可能です。これに、加工段階で各種の添加剤や顔料を配合して成形材料とし、加工を施して、塩ビ製品を得ます。
 塩ビ樹脂は、ビニールと言ったほうが馴染みやすいかもしれません。それは戦後、塩ビ樹脂を原材料とする塩ビ製品がフィルムやシートの形状で国民生活に浸透した際、簡便にビニールと略称されたことに始まるようです。それまでは硬い感触の熱硬化性樹脂しかなかったわが国に、初めて柔らかい風合いの合成樹脂製品が登場したインパクトは強く、その後に登場したポリエチレンなどのフィルム製品までもがビニールと呼ばれるようになりました。

 合成樹脂はいずれも単一の分子(モノマー)を原料としており、重合といわれる化学反応で鎖状に長くつなげるという意味で「高分子(ポリマー)」とも呼ばれます。塩ビ樹脂も同様に、その原料である塩ビモノマーを重合し、高分子としたものです。(図表1-1)
 モノマーのいくつかはガス状の不安定な化学物質として存在し、中にはそのままヒトが接すると健康被害を引き起こすものもあり、厳重な安全管理のもとで製造されています。しかし、モノマーを重合して得られるポリマーは、化学的に安定した固体であり、ヒトの健康への影響はありません。塩ビ樹脂の原料の塩ビモノマーは、高圧ガスであり、発がん性などヒトヘの影響がありますが、ポリマーとなった塩ビ樹脂には発がん性はありません。
 このように合成樹脂とその原料は、化学物質としての性質が合成の前後でまったく異なってきます。名称についても馴染みにくく、その結果、性状や安全性について誤解を招きがちです。さらに塩ビ樹脂(ポリ塩化ビニル)と、その原料である塩ビモノマー(塩化ビニル)を塩ビと呼ぶことがあるため、一層混同されがちです。
 2003年2月に「“発がん性のある”塩化ビニルが大気や地中へ放出」という誤報道がありましたが、これもその一例です。
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 塩ビ樹脂はその組成の40%が石油から作られています。したがって石油100%でつくられるプラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどと比較し、枯渇性資源である石油の消費量が少ない、省資源型のプラスチックといえます。
 また塩ビ樹脂の組成の60%は工業塩からつくられています。したがって塩素を含む物質の特性である難燃性に富んだプラスチックです。着火しても火源が離れれば自己消火性があるので炎が消えます。

 日本のプラスチック生産量は2001年で約1,300万トンですが、このうちポリエチレン、ポリプロピレン、塩ビ樹脂、ポリスチレンの4種類で約70%を占めています。塩ビ樹脂は世界でも日本でも、最も早くから工業化された歴史を持つ汎用プラスチックです。
 塩ビ樹脂は安価で耐久性、加工性に優れるため、浮き輪やビーチボールなどの空気入玩具や、レインコートや袋物容器といったフィルムシート類、あるいはケミカルシューズや鞄、家具の表皮のようなレザーなど、身近な日用品として昭和23年頃から用いられ始めました。ほぼ時期を同じくして電線の被覆材料にも採用されています。今日では上下水道用や光ファイバー保護用のパイプ、壁紙や床材、窓枠、建具といった耐久性の必要な土木・建築資材にも大きく広がっています。

 塩ビ樹脂はその原料である塩ビモノマーの製法に由来して、製造エネルギーが少なくてすみます。 「(社)プラスチック処理促進協会」の調査によれば、塩ビ樹脂は他のプラスチックと比べ、生産に必要なエネルギーが約70%であることが判明しており、その分、生産に伴うCO2排出量が少なくてすむので地球温暖化の防止に貢献していることになります。
 また必要な強度と耐久性があって、しかも熱伝導率が低いため、住宅の窓枠(樹脂サッシ)や外装化粧材(サイディング)などの建材に用いれば、アルミなどの金属製建材に比して3倍の断熱性を確保できます。その結果、石油などの化石燃料の消費を削減し、ここでもCO2の削減に貢献します。

塩ビ製品は価格と物性のバランスがとれた優れた汎用樹脂製品です。その使用時の物性の長所と短所を整理してみると次のようになります。また、短所を改良するためには、ポリマーアロイによる改質が可能です。
<長所>
・機械的物性が優れている。
・耐クリープ性に優れている。
・可塑剤を添加することで塩ビ製品の柔らかさを自由に変えられる。
・耐薬品性が優れている。
・透明である。
・接着性、印刷性に優れている。
・難燃性である。
・電気持性が良い。
・軟質塩ビ製品の場合、ゴムのようなエラストマーや
 皮革のような風合いが得られる。
<短所>
・低温時の衝撃強度が低い。
・熱変形温度(実用最高温度)がやや低い。
・軟質塩ビ製品の場合、可塑剤の染みだしがある。
(ブリード、揮発、移行)
・粘弾性が高く、大型の射出成形に向かない。


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